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古本屋さん

小都市北九州の海岸線に沿った鉄道を本州に向かった所に門司駅はある
駅の真ん前にドーンとパチンコ屋があるような情けない町が大里地区である
そこを中規模の戸ノ上山に向かいテクテクと歩いて行くと小さな古本屋があった
平成の年号になると同時に閉店してしまったが、なかなか味のある店主が奥に座して
まだ学生時代の私のよき話し相手となってくれていた。
イメージとしては、矍鑠とした古武士のようであり威厳があった、話の奥底にある薀蓄は
子供心にも「うーんそうなのかぁ」と畏敬の念で聞く内容が多く、品格とはこのような
大人の事を謂うのだと感じ入った事であった
古本屋さん_f0031417_084946.jpg

                                                  (イメージ写真)



今日は少し心温まるお話を拾いましたので、ご紹介。


ある大企業の相談役の方が、苦学生だった頃のお話しです。
その方の生年から考えたら、昭和10年代かと思われます。
難波から新世界へ向かう中間に「日本橋」という地区があります。
その一角に、当時、大阪唯一の古本屋街がずらりと建ち並んでいました。
ここに教科書専門の古本屋もあり、少年時代、お金の無いKさんは、
一部の教科書をここで調達していました。
ただ、全ての教科書を買うには、お金が大幅に不足していました。
Kさんは、今思えば、とんでもない暴挙ですが、
買えない教科書は、この店で大学ノートに書き写すという荒技を
実行することにしました。
Kさんは、やってみて実に難しい作業であることが判りました。
声に出して咎めはしなかったけど、眼鏡ごしに、
座ったままの店主が奥からジロッと睨みつけているような気がします。
少しでも早く写し終えようと焦るのですが、
何分にも教科書が何冊もあるので、手はしびれ、足が棒のようになり、
こりゃ大変なことになったと先が案じられたそうです。
到底一日では無理で、次の日も、そしてその次の日も、日参を続けました。
もし、ここで止めたら、否応なく親に負担をかけることになるので、
それは一切考えませんでした。
ところが三日目にちょっとした変化が起こりました>>>
三日目にKさんが、いつもの書棚の下に行くと、
ちょこんと小さな椅子が一つ置いてあるのに気が付きました。
店主の方をそっと盗み見すると、知らん顔で、そっぽを向いていました。
Kさんは、厚かましくも、ままよとその椅子に座って、ノート書きを始めました。
店主は最後まで、こちらを見ようとしませんでした。
毎日のように、多くの苦学生を見慣れたはずの店主にも、
Kさんは、一層輪をかけたひどい苦学生に見えたのでしょう。
見るに見かねて、かわいそうにと同情してくれたのかもしれません。
翌日、全部写し終えたKさんは、初めて、店主のところへ行きました。
真っ赤な顔をしながら、
「すみませんでした」とペコンと頭を下げたら、
店主も初めて声をかけてくれました。
「これからも頑張りなさいよ」
そう言って、すでに用意してあったらしい真新しい英和辞典を一冊、
Kさんの手に持たせました。
はじめは怖い顔をしていた店主。
しかし、とうとう一度もとがめることなく見逃してくれたことに、
Kさんは、子供心に深く感謝していました。
それだけでも十分なのに、その上、かねがね欲しいと思っていた
最新の英和辞典をもらって、Kさんはただただ恐縮するばかりでした。
店を出て、帰りながらの道で、Kさんは押さえようのない涙を流し続けたそうです。
人の心のしみじみした温かさが、心から嬉しかったのです。
あとで、人伝にKさんは聞きました。
「写している教科書を、無料で、いっそあげようと思ったのだが、
 そんな施(ほどこ)しめいたことは、
 かえって将来ある少年のプライドを傷つけるだけ。
 せめて、書き終わるまで、じっと見守るだけにしようと思った。
 全部書き終えた時は、実のところ、私の方がほっとして嬉しかったね。
 英和辞典は、努力した褒美にあげたんだから、
 受け取ってくれて、ほんとによかった」
そう聞かされ、改めてKさんはまた泣いたそうです。
by mackworld | 2015-02-07 00:11 | 徒然風景 | Comments(12)
Commented by peko_tin at 2015-02-07 10:37
何とも心温まるお話ですね。
買えない教科書を書き写すKさんを、苦学生だと察した店主が
彼の行為を黙認した上に小さな椅子を置いてくれたこと、
そして書き写した教科書ではなく最新の英和辞典をご褒美にあげたことは、
きっとその後のKさんの大きな力となって、大企業に就職する手助けをしてくれたのではないでしょうか。
こういう話を聞くたびに、人との出会いって良くも悪くもその人の人生を大きく変えるものなんだなぁと思います。
素晴らしいお話のご紹介をどうもありがとうございました!
Commented by jinsei_rarara at 2015-02-07 12:07
イメージ写真のおじいさんに何か一言欲しいです!!
Commented by mackworld at 2015-02-07 12:11
■ぺこてぃん
どういたしますて、貴女にも時折こころ温まる話を提供頂いているのでお礼だす。
Commented by mackworld at 2015-02-07 12:15
■ららら
rararaが「じっちゃん棺桶入るのはまだ早いぞー、善人はあと10年は頑張って営業しろー」と言えと申しておりまする。

言っときますた。
Commented by jyo-yama2 at 2015-02-07 14:11
本当にホッコリするよいお話をありがとう。そんな店主のような人に私もなりたい。
Commented by strawberry0124 at 2015-02-07 16:23
感動的で粋なお話をありがとうございました♪
いい話ですね。
現代の割りきりも楽といえば、楽ですが、
私も店主のような深い愛情のある粋なオトナの女性になりたいわ。
Commented by atomota at 2015-02-07 20:28
・・・・・・・涙が止まりません。
・・・・・・・涙を隠す気にもなりません。
いい話をありがとう。ただそれだけです。。。
Commented by mackworld at 2015-02-07 20:37
■jyoちゃん
なれますよ貴女なら、学校教師で若い魂に触れてきた貴女だもの、なれるに決まってまする。(^^)v
Commented by mackworld at 2015-02-07 20:43
■苺はん
まっいいかで簡単にやり過ごすのは簡単だけれど、寡黙にじっと見詰める眼差しも時には必要ですね。
「粋」とは米を90回突いて初めて大人が美味いと感じるご飯になると自分勝手に解釈しておりまする(笑)
Commented by mackworld at 2015-02-07 20:43
■アトムどん
うんうん
貴方らしくて
いいや。
Commented by reikogogogo at 2015-02-07 20:58
Mackさん感動!
涙が出ます。
Commented by mackworld at 2015-02-07 21:25
■reikoはん
人間、泣くか笑うかぐらいが丁度ええだすな。
脊柱管はやく全快して、「あははははー」と笑って退院して
モリモリ美味いもの食ってガンガン記事更新してケロ。
オイラは宗教・政治・スポーツはネタにしまへんが貴方の社説(社会説法)を語る頭の回転の早さには舌を巻いて「ガルルル」と唸っております。
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